日記 兄の太音が小さい頃、

ボクのお気に入りの靴をブカブカ履きながら
「いつか、このくつちょうだいね」と言ったのを覚えている
次男の莞は兄の靴のおさがりだけは厭だという
履きグセがついていてどうも難しい由。不憫である

家族で行楽の朝など、母さんが着せた一番の晴れ着で
「まだ出んのん」とはしゃいでいる弟のは
ちょうど二年ほど前に 兄の着古した服で

母さんが莞に靴を新調してやりたいという
で、兄弟に1足ずつ。奮発してボクのも買ったのだが

元日早朝、子供たちの剣道の初稽古を見学にと
玄関先にそれぞれ新調の靴、履いてみたら兄は靴がもう小さいという
なんとそんなばかな数ヶ月前に買ってやった靴が

それでどうしたかというと
兄はボクの靴を履き、弟は兄の靴と自分の靴をモノにし
ボクは下駄箱の奥から懐かしい独身時代の靴をだし
家族そろって道を歩いたのだった

その夜、友の賀状が 一々ごもっともで
それを肴にブランデーをちびちび呑んだ